キャリー・ストーリーのまとめwiki -
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*Requiem (ID7802)[#ld0841e6]
**説明 [#b96047ee]
誰かが記した本のようだ……
**内容 [#ibef82b6]
***1ページ目 &COLOR(#DDDDDD){(ID64859)};[#i162f3fb]
お気に入りの場所を見つけた!~
~
ここなら誰にも邪魔されずに過ごせそう。~
~
いつか、今のことを思い返せるようになった時のために、日記...
***2ページ目 &COLOR(#DDDDDD){(ID70372)}; [#d8eac660]
これから、今考えていることなんかを書いていこうと思う。~
~
前に授業で習った、アンネの日記、だっけ。~
~
誰にも言えない不安を、手紙の形式にして残していたっていう...
~
きっと、同じ。~
~
いつか、誰かが気づいてくれるといいな。
***3ページ目 &COLOR(#DDDDDD){(ID74436)}; [#sce50649]
この図書館には好みの本がたくさん!~
~
題名だけ眺めていてもドキドキしちゃうよ。~
~
本を読んで、その世界を想像している時間だけがホンモノ。~
~
その時間だけは、色んなことを忘れていられるから。
***4ページ目 &COLOR(#DDDDDD){(ID74437)}; [#b00517ae]
最近読んだのは、永遠に冬が続く世界の物語。~
~
一族の仲間が居なくなってしまって、一人残された勇者が、別...
~
誰かのために頑張るって、なんだか羨ましい。~
~
でも……~
~
誰にも褒めてもらえなくても、その勇者は戦うことができたの...
~
助けてくれてありがとう、って言ってもらえなくても、平気な...
~
もしかしたら、居なくなってしまった仲間ってのは、その勇者...
***5ページ目 &COLOR(#DDDDDD){(ID74438)}; [#ya5b29f7]
前に読んだ本にも、似たような話があって。~
~
隊からはぐれてしまって、別の場所で独り古代兵器と戦う兵士...
~
誰かに探してもらいたいって、寂しくなかったのかなぁ。~
~
その本の中では、兵士は時を救った英雄として後世にまで語り...
~
私は、自分のいる場所で、誰かに「やったね」って言ってもら...
***6ページ目 &COLOR(#DDDDDD){(ID74439)}; [#g2ec2265]
そうだ、あの兵士の話。~
~
怪談みたいにしてみんなに話してみようかな。~
~
暗くなった教室に、部隊に戻れなくなった兵士が彷徨いこんで...
~
音楽室の肖像画が夜中に笑うとか。~
~
実験室の人体標本が動くとか。~
~
それといっしょ。~
~
自分がいなくなった場所で、誰にどんな話をされているのかな...
***追加されたページ(1) &COLOR(#DDDDDD){(ID74441)}; [#vad7...
今日も、図書館でひとり。~
~
機能まで考えていた作り話も、お話するのはやめた。~
~
本人のいない場所で、いない人の話をするなんて、それじゃ結...
~
投げた言葉は、切れ味の鈍いブーメランみたいに、いつか自分...
~
言葉って、怖い。~
~
もしも、私に、言葉がそのまま武器になるような力があったら...
~
……って、こんな事ばっかり考えているから、きっと明日もひと...
***追加されたページ(2) &COLOR(#DDDDDD){(ID75509)}; [#f486...
少し前の私なら、図書館に来るなんてことはなかったと思う。~
~
授業と部活と、友達とのくだらないお喋り。~
~
それでも、あたりまえの毎日なんて、続かない。~
~
ほんの些細なきっかけで、世界は簡単に変わってしまうよ。~
~
部活にも顔を出さない私のことを、みんなは何て言っているん...
~
……考えるのも、なんだか怖い。
***追加されたページ(3-1) &COLOR(#DDDDDD){(ID77083)}; [#d1...
図書館に通っていると、気づくことが多い。~
~
本を読んでいるひと、宿題をしている人……あたりまえの事かも...
~
なかでも、最近よく見る顔がひとり。~
~
思いつめたような顔をして、きっと私も誰かから見たら同じよ...
~
だからかな、なんだか気になる。~
~
誰にも邪魔されない場所を探していたはずなのに、それでも他...
***追加されたページ(3-2) &COLOR(#DDDDDD){(ID77085)}; [#i9...
明日は学校に来なくていい。そう思うだけで、とても気が楽。~
~
みんなと顔を合わさずに済む言い訳を考えなくていいから。~
~
あの子も同じ気持ちで過ごしているのかなぁ。~
~
だとしたら……
***追加されたページ(3-3) &COLOR(#DDDDDD){(ID77086)}; &COL...
明日は学校に来なくていい。そう思うだけで、とても気が楽。~
~
みんなと顔を合わさずに済む言い訳を考えなくていいから。~
~
あの子も同じ気持ちで過ごしているのかなぁ。~
~
だとしたら……
***追加されたページ(4-1) &COLOR(#DDDDDD){(ID77087)}; [#q3...
その日もやっぱり普段と同じように緊張した顔をして、あの子...
~
あの表情。~
~
話しかけてみようと思ったのは優しさ……なんかじゃない。~
多分、好奇心と仲間意識みたいなものを勝手に感じたせいだ。~
~
「あの……」~
~
その時、自分の声が震えていたと思う。~
~
すると、突然、あの子は立ち上がって、顔をすっと近付けてき...
***追加されたページ(4-2) &COLOR(#DDDDDD){(ID79769)}; [#ue...
怒られる!と、身構えたのは、きっといつもの癖。~
~
勝手に仲間意識なんかを感じて話しかけるのはやっぱりいけな...
~
後悔する私に真剣な瞳を向けて問いかけてた。~
~
「ひょっとしいて。今、話しかけました?……なんか私、変、でし...
~
……え?~
~
「えっと……ううん。大丈夫」~
~
絶対変だったけど、社交辞令の笑顔で否定した私。~
~
「良かったぁ」~
~
落ち着いたのか、いつも見る思いつめた表情と違って急にあど...
~
「寝ちゃってたんですよぇ」~
「寝っ、寝てた?目、開いてたけど」~
「私、図書館来ると、3割の確率でやっちゃうんです……」~
~
……何が?3割?~
~
「うまくいくと閉じてるんだけど。惜しいですねぇ」~
~
変わってることは間違いないけど、話しやすいいい子だと思っ...
少なくてもあいつらより。
***追加されたページ(4-3) &COLOR(#DDDDDD){(ID79771)}; [#q1...
「今ですね、千年咲く桜の夢を見ていたんですよぅ……」~
~
千年咲く、桜?~
笑いながら話しかけてくる様子、こんな風に誰かと会話するの...
~
「桜って、あの、お花見とかじゃなくって、神話の世界のお話...
~
人の夢話は大抵つまらないというけれど、聞いてみれば、壮大...
~
本を読んで集中していると物語に入れ込んじゃうクセがあるん...
~
やっぱり、なかなか変わってる。~
~
感心していたら、彼女が聞いてきた。~
~
「あの、変じゃないなら、なぜ私に話しかけてきたんですかぁ?...
~
なんて答えたらいいだろう……。
***追加されたページ(5-1) &COLOR(#DDDDDD){(ID79772)}; [#z1...
自分と同じような、はぐれ者を探しているとは言えなかった。~
だから、私はなんとなく嘘をついたのだと思う。~
~
「この学校の魔を……探っていたの」~
~
「魔?」~
~
「昨日まで当たり前にあったものが、ある日そっくり変わって...
~
「……何ですかぁ、それ」~
~
「外見は同じ。だけど中身だけが全然昨日とは別物なの。例え...
意味、わかる?」~
~
私が物語のように語ったのはもちろん自分自身のこと。~
友達と急に馴染めなくなって、気づいたら冷たくされていた、...
***追加されたページ(5-2) &COLOR(#DDDDDD){(ID80226)}; [#o7...
あの子はそんなことを疑いもしなかった。~
~
「ほんと? 突然、そんなことが起きたら怖いよねぇ……」~
~
どうやら信じているみたい。~
複雑だけど嬉しかったな。~
気を良くした私は話をさらに膨らませた。~
~
「でもね、魔の正体がわかったの」~
~
幼さが残る顔は途端に、きゅっと険しくなる。~
~
「それはね……。月から始まったんだ」~
~
「月から?」~
~
「ほら、昔から満月の夜は事件が起きやすいとかあるでしょう?...
それは月自体が悪いんじゃないの。キレイなものっていい物も...
~
月はそれを見上げる人の心を吸い上げるの。きれいな心は月の...
~
「……人の心かぁ」~
^
「うん。やがて魔は遺子を持ち、大きな力を得るのよ」~
~
私は得意げに話す。~
思いつきの割には、なかなかいいアイディアだと思った。
***追加されたページ(5-3) &COLOR(#DDDDDD){(ID80227)}; [#x3...
「魔がここにいるわけですねぇ?」~
~
「そう。この学校に潜んでいるの。気づかないうちに色んな人...
嫉妬や傲慢、渦巻いた負の塊みたいなものを、魂をそっくり入...
~
「わぁ。あたし、大丈夫かなぁ?」~
~
「大丈夫。あなたは生き残りよ。だから声かけたんじゃない」~
~
「そっか。よかったぁ」~
~
ホッとしている。~
本当に信じてるみたい。~
~
「魔ってどんな形をしているんだろう?」~
~
「元々、姿形が決まっているわけじゃないからなんでもよかっ...
月を見る人々が思い浮かべる、わかりやすい象徴みたいなもの...
~
「ヴァンパイヤとか?」~
~
「そうそう、月と言えば定番だよね。あと狼男」~
~
私も相槌を打った。~
~
「やだー。狼男はちっちゃいのがいいな。そのほうがカワイイ...
~
「……まあ、ちっちゃいのも、いるかもね」~
~
「とにかく、それらを、退治すればいいのね?」~
~
急に使命感たっぷりな顔をした。
***追加されたページ(5-4) &COLOR(#DDDDDD){(ID80228)}; [#zf...
た、退治?~
~
「しょうがないか。だって私に声かけたのは、そういうことな...
~
彼女に何があったんだろう。~
なぜ、そんなにも何かをしょいこみたいのだろう。~
びっくりしてしまった。~
~
「私がこの学校に来たのも、そういうことなんだね……そうすれ...
~
その時、わかった。~
どうやら、転校生だったみたいだ。~
きっとまだ、うまく話すことができなくて。変わっている性格...
それで、自分の世界に入りがちになっちゃう子だったんだ。~
~
「ねえ、あのさ……」~
~
黙っていた。~
いつもみたいな、張り詰めた表情をしている。~
~
「あのさ」~
~
やっぱり聞こえていないようだった。~
~
……もしかして。
***追加されたページ(6-1) &COLOR(#DDDDDD){(ID80230)}; [#m1...
……私の話を聞きながら眠ってしまったんだと思う。~
~
このまま立ち去っていいのか、近くにいたほうがいいのか……そ...
~
目に映る風景は灰色のもやがかかっているみたいだ。~
これはやっぱり、「魔」なのかもしれない。~
~
あの子の手に、自分の手を重ねてみる。~
~
……ねえ。そっちの世界は、どう?
***追加されたページ(6-2) &COLOR(#DDDDDD){(ID81062)}; [#w3...
張り詰めた顔で世界に入り込んでいる顔を見ると、夢の世界も...
~
でも、変だよね。~
~
夢って楽しむためにある気がしない?~
なんでそこでも頑張らなきゃいけないの?~
~
誰かより目立ったり、役に立たなかったりしなくちゃ、私たち...
~
「一人じゃないよ。私はそばにいる」~
~
それは、私が誰かに言ってほしかった言葉。
***追加されたページ(6-3) &COLOR(#DDDDDD){(ID81063)}; [#c6...
世界が大きな天秤だとしたら、厳しさの反対側には優しさもき...
~
傷つける言葉がいつか自分に返ってくるように、優しい言葉も...
~
悲しいだけじゃない、柔らかくて温かいものはきっとあちこち...
~
だから、大事なことは、きちんと伝えなくちゃと思ったんだ。
***追加されたページ(6-4) &COLOR(#DDDDDD){(ID81064)}; [#u9...
あの子の強張った手を、ぎゅっと握った。~
~
「もう、そんなところで頑張らなくていいんだよ」~
~
魔なんていない。~
~
それは世界を怖がりすぎる私たちの心が作ったものだ。~
だから、私はもう一度呼びかける。~
~
「戻ってきて」~
~
重なり合った手から伝わる思い。~
~
私からあの子へ。~
あの子から私へ。~
~
大丈夫。~
ここにもあなたや私の望む優しさはあるよ。~
絶対に。~
~
さっきまで灰色だった光景はこんなにも鮮やかなのか、と思っ...
~
……その時、ぐい、と手が握り返された。
***追加されたページ(6-5) &COLOR(#DDDDDD){(ID81774)}; [#xd...
「帰ってこれたぁ」~
~
なんだかその声にホッとしたっけ。~
私がかける言葉はもちろん。~
~
「お帰りなさい」~
~
その時、微笑んだあの子の顔。~
暗い場所にさっと日が射すような……って、ああいう表情のこと...
~
「声が聞こえてきたんです。……いろんな声。その中に、あなた...
~
大切なものを向こうの世界で見つけてきたみたい。~
~
それからすっかり仲良くなった私たちだけど、忘れていた大事...
***追加されたページ(6-6) &COLOR(#DDDDDD){(ID81775)}; [#p7...
それは、「お帰りなさい」から始まる自己紹介。~
~
あの子の名前はキリエ。~
幼く見えたけど、実は先輩だったみたい。~
~
さんづけで呼ぼうか、先輩と呼ぼうか迷う私に「キリエでいい...
~
キリエというのは、祈りの言葉でもあるらしい。~
~
せっかく図書館にいるのだから調べてみなくちゃ。~
~
……そのあとで久しぶりに部活に顔を出してみようかな。
***追加されたページ(6-7) &COLOR(#DDDDDD){(ID81777)}; [#xf...
これから、今考えていることなんかは、誰かに話していこうと...
~
前に本で読んだ、英雄の叙事詩や、冬の物語。それと、キリエ...
~
どこかで戦っていても、助けてくれるひとがいる。覚えてくれ...
~
きっと、同じ。~
~
もしも、これを読む誰かがいて。~
~
その誰かが何かに絶望して暗い気持ちでいたとしても。~
~
それでも温かいものは絶対にあることを伝えたかったんだ。~
~
いつか誰かが気づいてくれるといいな。
***最終ページ &COLOR(#DDDDDD){(ID81778)}; [#tf278ad9]
記述はここで終わっている……~
~
その日常に、安息を。~
~
【Requiem:完】
***最終ページ &COLOR(BLUE){(順次公開されていた時点)}; [#e...
……~
~
ページはここで途切れている……~
~
時が満ちれば新たなページが読めるようになりそうだ~
~
終了行:
*Requiem (ID7802)[#ld0841e6]
**説明 [#b96047ee]
誰かが記した本のようだ……
**内容 [#ibef82b6]
***1ページ目 &COLOR(#DDDDDD){(ID64859)};[#i162f3fb]
お気に入りの場所を見つけた!~
~
ここなら誰にも邪魔されずに過ごせそう。~
~
いつか、今のことを思い返せるようになった時のために、日記...
***2ページ目 &COLOR(#DDDDDD){(ID70372)}; [#d8eac660]
これから、今考えていることなんかを書いていこうと思う。~
~
前に授業で習った、アンネの日記、だっけ。~
~
誰にも言えない不安を、手紙の形式にして残していたっていう...
~
きっと、同じ。~
~
いつか、誰かが気づいてくれるといいな。
***3ページ目 &COLOR(#DDDDDD){(ID74436)}; [#sce50649]
この図書館には好みの本がたくさん!~
~
題名だけ眺めていてもドキドキしちゃうよ。~
~
本を読んで、その世界を想像している時間だけがホンモノ。~
~
その時間だけは、色んなことを忘れていられるから。
***4ページ目 &COLOR(#DDDDDD){(ID74437)}; [#b00517ae]
最近読んだのは、永遠に冬が続く世界の物語。~
~
一族の仲間が居なくなってしまって、一人残された勇者が、別...
~
誰かのために頑張るって、なんだか羨ましい。~
~
でも……~
~
誰にも褒めてもらえなくても、その勇者は戦うことができたの...
~
助けてくれてありがとう、って言ってもらえなくても、平気な...
~
もしかしたら、居なくなってしまった仲間ってのは、その勇者...
***5ページ目 &COLOR(#DDDDDD){(ID74438)}; [#ya5b29f7]
前に読んだ本にも、似たような話があって。~
~
隊からはぐれてしまって、別の場所で独り古代兵器と戦う兵士...
~
誰かに探してもらいたいって、寂しくなかったのかなぁ。~
~
その本の中では、兵士は時を救った英雄として後世にまで語り...
~
私は、自分のいる場所で、誰かに「やったね」って言ってもら...
***6ページ目 &COLOR(#DDDDDD){(ID74439)}; [#g2ec2265]
そうだ、あの兵士の話。~
~
怪談みたいにしてみんなに話してみようかな。~
~
暗くなった教室に、部隊に戻れなくなった兵士が彷徨いこんで...
~
音楽室の肖像画が夜中に笑うとか。~
~
実験室の人体標本が動くとか。~
~
それといっしょ。~
~
自分がいなくなった場所で、誰にどんな話をされているのかな...
***追加されたページ(1) &COLOR(#DDDDDD){(ID74441)}; [#vad7...
今日も、図書館でひとり。~
~
機能まで考えていた作り話も、お話するのはやめた。~
~
本人のいない場所で、いない人の話をするなんて、それじゃ結...
~
投げた言葉は、切れ味の鈍いブーメランみたいに、いつか自分...
~
言葉って、怖い。~
~
もしも、私に、言葉がそのまま武器になるような力があったら...
~
……って、こんな事ばっかり考えているから、きっと明日もひと...
***追加されたページ(2) &COLOR(#DDDDDD){(ID75509)}; [#f486...
少し前の私なら、図書館に来るなんてことはなかったと思う。~
~
授業と部活と、友達とのくだらないお喋り。~
~
それでも、あたりまえの毎日なんて、続かない。~
~
ほんの些細なきっかけで、世界は簡単に変わってしまうよ。~
~
部活にも顔を出さない私のことを、みんなは何て言っているん...
~
……考えるのも、なんだか怖い。
***追加されたページ(3-1) &COLOR(#DDDDDD){(ID77083)}; [#d1...
図書館に通っていると、気づくことが多い。~
~
本を読んでいるひと、宿題をしている人……あたりまえの事かも...
~
なかでも、最近よく見る顔がひとり。~
~
思いつめたような顔をして、きっと私も誰かから見たら同じよ...
~
だからかな、なんだか気になる。~
~
誰にも邪魔されない場所を探していたはずなのに、それでも他...
***追加されたページ(3-2) &COLOR(#DDDDDD){(ID77085)}; [#i9...
明日は学校に来なくていい。そう思うだけで、とても気が楽。~
~
みんなと顔を合わさずに済む言い訳を考えなくていいから。~
~
あの子も同じ気持ちで過ごしているのかなぁ。~
~
だとしたら……
***追加されたページ(3-3) &COLOR(#DDDDDD){(ID77086)}; &COL...
明日は学校に来なくていい。そう思うだけで、とても気が楽。~
~
みんなと顔を合わさずに済む言い訳を考えなくていいから。~
~
あの子も同じ気持ちで過ごしているのかなぁ。~
~
だとしたら……
***追加されたページ(4-1) &COLOR(#DDDDDD){(ID77087)}; [#q3...
その日もやっぱり普段と同じように緊張した顔をして、あの子...
~
あの表情。~
~
話しかけてみようと思ったのは優しさ……なんかじゃない。~
多分、好奇心と仲間意識みたいなものを勝手に感じたせいだ。~
~
「あの……」~
~
その時、自分の声が震えていたと思う。~
~
すると、突然、あの子は立ち上がって、顔をすっと近付けてき...
***追加されたページ(4-2) &COLOR(#DDDDDD){(ID79769)}; [#ue...
怒られる!と、身構えたのは、きっといつもの癖。~
~
勝手に仲間意識なんかを感じて話しかけるのはやっぱりいけな...
~
後悔する私に真剣な瞳を向けて問いかけてた。~
~
「ひょっとしいて。今、話しかけました?……なんか私、変、でし...
~
……え?~
~
「えっと……ううん。大丈夫」~
~
絶対変だったけど、社交辞令の笑顔で否定した私。~
~
「良かったぁ」~
~
落ち着いたのか、いつも見る思いつめた表情と違って急にあど...
~
「寝ちゃってたんですよぇ」~
「寝っ、寝てた?目、開いてたけど」~
「私、図書館来ると、3割の確率でやっちゃうんです……」~
~
……何が?3割?~
~
「うまくいくと閉じてるんだけど。惜しいですねぇ」~
~
変わってることは間違いないけど、話しやすいいい子だと思っ...
少なくてもあいつらより。
***追加されたページ(4-3) &COLOR(#DDDDDD){(ID79771)}; [#q1...
「今ですね、千年咲く桜の夢を見ていたんですよぅ……」~
~
千年咲く、桜?~
笑いながら話しかけてくる様子、こんな風に誰かと会話するの...
~
「桜って、あの、お花見とかじゃなくって、神話の世界のお話...
~
人の夢話は大抵つまらないというけれど、聞いてみれば、壮大...
~
本を読んで集中していると物語に入れ込んじゃうクセがあるん...
~
やっぱり、なかなか変わってる。~
~
感心していたら、彼女が聞いてきた。~
~
「あの、変じゃないなら、なぜ私に話しかけてきたんですかぁ?...
~
なんて答えたらいいだろう……。
***追加されたページ(5-1) &COLOR(#DDDDDD){(ID79772)}; [#z1...
自分と同じような、はぐれ者を探しているとは言えなかった。~
だから、私はなんとなく嘘をついたのだと思う。~
~
「この学校の魔を……探っていたの」~
~
「魔?」~
~
「昨日まで当たり前にあったものが、ある日そっくり変わって...
~
「……何ですかぁ、それ」~
~
「外見は同じ。だけど中身だけが全然昨日とは別物なの。例え...
意味、わかる?」~
~
私が物語のように語ったのはもちろん自分自身のこと。~
友達と急に馴染めなくなって、気づいたら冷たくされていた、...
***追加されたページ(5-2) &COLOR(#DDDDDD){(ID80226)}; [#o7...
あの子はそんなことを疑いもしなかった。~
~
「ほんと? 突然、そんなことが起きたら怖いよねぇ……」~
~
どうやら信じているみたい。~
複雑だけど嬉しかったな。~
気を良くした私は話をさらに膨らませた。~
~
「でもね、魔の正体がわかったの」~
~
幼さが残る顔は途端に、きゅっと険しくなる。~
~
「それはね……。月から始まったんだ」~
~
「月から?」~
~
「ほら、昔から満月の夜は事件が起きやすいとかあるでしょう?...
それは月自体が悪いんじゃないの。キレイなものっていい物も...
~
月はそれを見上げる人の心を吸い上げるの。きれいな心は月の...
~
「……人の心かぁ」~
^
「うん。やがて魔は遺子を持ち、大きな力を得るのよ」~
~
私は得意げに話す。~
思いつきの割には、なかなかいいアイディアだと思った。
***追加されたページ(5-3) &COLOR(#DDDDDD){(ID80227)}; [#x3...
「魔がここにいるわけですねぇ?」~
~
「そう。この学校に潜んでいるの。気づかないうちに色んな人...
嫉妬や傲慢、渦巻いた負の塊みたいなものを、魂をそっくり入...
~
「わぁ。あたし、大丈夫かなぁ?」~
~
「大丈夫。あなたは生き残りよ。だから声かけたんじゃない」~
~
「そっか。よかったぁ」~
~
ホッとしている。~
本当に信じてるみたい。~
~
「魔ってどんな形をしているんだろう?」~
~
「元々、姿形が決まっているわけじゃないからなんでもよかっ...
月を見る人々が思い浮かべる、わかりやすい象徴みたいなもの...
~
「ヴァンパイヤとか?」~
~
「そうそう、月と言えば定番だよね。あと狼男」~
~
私も相槌を打った。~
~
「やだー。狼男はちっちゃいのがいいな。そのほうがカワイイ...
~
「……まあ、ちっちゃいのも、いるかもね」~
~
「とにかく、それらを、退治すればいいのね?」~
~
急に使命感たっぷりな顔をした。
***追加されたページ(5-4) &COLOR(#DDDDDD){(ID80228)}; [#zf...
た、退治?~
~
「しょうがないか。だって私に声かけたのは、そういうことな...
~
彼女に何があったんだろう。~
なぜ、そんなにも何かをしょいこみたいのだろう。~
びっくりしてしまった。~
~
「私がこの学校に来たのも、そういうことなんだね……そうすれ...
~
その時、わかった。~
どうやら、転校生だったみたいだ。~
きっとまだ、うまく話すことができなくて。変わっている性格...
それで、自分の世界に入りがちになっちゃう子だったんだ。~
~
「ねえ、あのさ……」~
~
黙っていた。~
いつもみたいな、張り詰めた表情をしている。~
~
「あのさ」~
~
やっぱり聞こえていないようだった。~
~
……もしかして。
***追加されたページ(6-1) &COLOR(#DDDDDD){(ID80230)}; [#m1...
……私の話を聞きながら眠ってしまったんだと思う。~
~
このまま立ち去っていいのか、近くにいたほうがいいのか……そ...
~
目に映る風景は灰色のもやがかかっているみたいだ。~
これはやっぱり、「魔」なのかもしれない。~
~
あの子の手に、自分の手を重ねてみる。~
~
……ねえ。そっちの世界は、どう?
***追加されたページ(6-2) &COLOR(#DDDDDD){(ID81062)}; [#w3...
張り詰めた顔で世界に入り込んでいる顔を見ると、夢の世界も...
~
でも、変だよね。~
~
夢って楽しむためにある気がしない?~
なんでそこでも頑張らなきゃいけないの?~
~
誰かより目立ったり、役に立たなかったりしなくちゃ、私たち...
~
「一人じゃないよ。私はそばにいる」~
~
それは、私が誰かに言ってほしかった言葉。
***追加されたページ(6-3) &COLOR(#DDDDDD){(ID81063)}; [#c6...
世界が大きな天秤だとしたら、厳しさの反対側には優しさもき...
~
傷つける言葉がいつか自分に返ってくるように、優しい言葉も...
~
悲しいだけじゃない、柔らかくて温かいものはきっとあちこち...
~
だから、大事なことは、きちんと伝えなくちゃと思ったんだ。
***追加されたページ(6-4) &COLOR(#DDDDDD){(ID81064)}; [#u9...
あの子の強張った手を、ぎゅっと握った。~
~
「もう、そんなところで頑張らなくていいんだよ」~
~
魔なんていない。~
~
それは世界を怖がりすぎる私たちの心が作ったものだ。~
だから、私はもう一度呼びかける。~
~
「戻ってきて」~
~
重なり合った手から伝わる思い。~
~
私からあの子へ。~
あの子から私へ。~
~
大丈夫。~
ここにもあなたや私の望む優しさはあるよ。~
絶対に。~
~
さっきまで灰色だった光景はこんなにも鮮やかなのか、と思っ...
~
……その時、ぐい、と手が握り返された。
***追加されたページ(6-5) &COLOR(#DDDDDD){(ID81774)}; [#xd...
「帰ってこれたぁ」~
~
なんだかその声にホッとしたっけ。~
私がかける言葉はもちろん。~
~
「お帰りなさい」~
~
その時、微笑んだあの子の顔。~
暗い場所にさっと日が射すような……って、ああいう表情のこと...
~
「声が聞こえてきたんです。……いろんな声。その中に、あなた...
~
大切なものを向こうの世界で見つけてきたみたい。~
~
それからすっかり仲良くなった私たちだけど、忘れていた大事...
***追加されたページ(6-6) &COLOR(#DDDDDD){(ID81775)}; [#p7...
それは、「お帰りなさい」から始まる自己紹介。~
~
あの子の名前はキリエ。~
幼く見えたけど、実は先輩だったみたい。~
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さんづけで呼ぼうか、先輩と呼ぼうか迷う私に「キリエでいい...
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キリエというのは、祈りの言葉でもあるらしい。~
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せっかく図書館にいるのだから調べてみなくちゃ。~
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……そのあとで久しぶりに部活に顔を出してみようかな。
***追加されたページ(6-7) &COLOR(#DDDDDD){(ID81777)}; [#xf...
これから、今考えていることなんかは、誰かに話していこうと...
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前に本で読んだ、英雄の叙事詩や、冬の物語。それと、キリエ...
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どこかで戦っていても、助けてくれるひとがいる。覚えてくれ...
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きっと、同じ。~
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もしも、これを読む誰かがいて。~
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その誰かが何かに絶望して暗い気持ちでいたとしても。~
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それでも温かいものは絶対にあることを伝えたかったんだ。~
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いつか誰かが気づいてくれるといいな。
***最終ページ &COLOR(#DDDDDD){(ID81778)}; [#tf278ad9]
記述はここで終わっている……~
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その日常に、安息を。~
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【Requiem:完】
***最終ページ &COLOR(BLUE){(順次公開されていた時点)}; [#e...
……~
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ページはここで途切れている……~
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時が満ちれば新たなページが読めるようになりそうだ~
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ページ名: